ペン回しが脳に与える影響 – 脳科学の教授に取材




ペン回しは指先で行う繊細な動きということから、脳トレにもなるのでは?という説がありました。
それを考えるに当たり、そもそもペン回しをしている時に脳はどういう動きをしているのか、今回その疑問を検証するべく、脳科学を専門とする東京理科大学の篠原菊紀教授に取材し、その真相を確かめてきました!

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この記事ではその内容を読みやすくざっくりまとめますが、より詳しく知りたいという方は下のURLからレポートをダウンロードしてご覧下さい!

「ペン回しが脳に与える影響に関する取材 レポート」
https://drive.google.com/drive/folders/1vga9aHKJkbF_XMI2qxRu6zeuIOXbiE-W?usp=sharing

ペン回しは脳トレになるの?

人間の脳は様々な部位に分かれており、各部位によって役割が違います。
一般的に脳トレと呼ばれるのは脳の中でも前頭葉の前側にある前頭前野という部位を活性化させることです。

前頭前野は「新しいことを覚える(覚えようとしている)」時に働く部位です。しかし、ただなんとなく練習しているだけではダメで、やる気をもってどこをどう動かせばこの動きが出来るのか、といった意識をしながらやらなければ活性化しません

また、技を習得して感覚だけで出来るようなレベルになると、前頭前野は沈静化します。しかしこれは悪いことではなく、脳の働きとしては自然な現象です。

つまりペン回しで言えば、ノーマルを出来るようにしようと指の位置や動かし方を試行錯誤している段階で活性化し、感覚を覚えて手元を見ないでも出来るようなレベルになると沈静化している、ということです。

ただ、沈静化してそれで終わりではなく、また新たな技や次の難易度の技に挑戦すると再び活性化します。

脳トレは前頭前野を「持続的に」活性化させることが大事で、技を習得してさらに次の技へ挑戦し、ステップアップしていくことが大事です。

ステップアップを意識して持続的に前頭前野を活性化させることができれば、脳トレとして効果があると言えます!

ペン回しはかつてHIDEAKIさんが作った技の命名法があるため、次のステップを定めやすいです。
「ソニックを覚えたから次はフルーエントソニックに挑戦しよう!」といった具合ですね。

有機化学の命名法から考えて作られたそうですが、本当に偉大な発明です!
取材に行った篠原教授もこの命名法については非常に高い評価をしていました!

技を習得したらもう効果はないの?

先ほど書いたように、脳トレとしては持続的な前頭前野の活性化が必要なので一度習得した技を繰り返しても期待できません。
ただその代わり、習得した技をすることによって別の効果が期待できます!

ずばり、手馴れた技をすることは「心を落ち着かせる効果」があります。

手馴れた技をやることにより、そこに集中して神経活動を落ち着かせ、リラックスさせる効果があります。

また、リラックス効果と同時に今度は脳の奥の方にある線条体という部位が活性化します。
この線条体は「やる気」の中核になっている部位で、「快感」をに関わる部位と強く結びついています。

慣れた技をやっている時って気持ちいいですよね?

その快感が得られると、線条体も刺激されるためやる気をおこすことにも繋がるんです!

手馴れた技をやると心を落ち着かせるだけでなく、やる気スイッチを押すことにも繋がる、ということです!
ちなみにこのやる気スイッチはペン回しのやる気だけでなく、他の行動をするやる気にも繋がります。そこは自分の中でうまく切り替えて使いましょう。

ペン回しを出来るようになるメカニズムとは!?

脳の部位である海馬は記憶を貯えておく部位として有名ですが、実はここで貯えることができる記憶は「言葉に表せる記憶」だけなんです。

ペン回しのような「技の感覚」の記憶は小脳や運動野という部分が関わってきます。
最終的に技を「できるようになった!」というレベルになった時には小脳に内部モデルができあがります。

「この指をこう動かせばペンはこう動く」という感覚を脳が覚えた状態ってことですね!

この内部モデルが出来るまでは「どの指をどう動かせばペンがどう動くのか」を意識しながら練習することが大事です。
もちろん最初は頭で考えている動きと、実際にやってしまう動きがズレてしまう、ということも多々あります。

上手くなるには上手い人を見よ!

人間にはミラーニューロンという神経細胞があります。これは見ているものを無意識的に真似して取り込む性質があります。
つまり「上手くなりたかったら上手い人をたくさん見る!」これが大事です!

逆に、ミラーニューロンは下手な動きも自分の中に取り込んでしまいます。
実際に行われた実験で、ダーツの上級者に下手なダーツの動画を見せて「なぜ狙ったところに当たらないか」を研究させるとその人自身のダーツの腕前が落ちてしまうというものがあります。

また、ペン回しではその回し方は千差万別様々なスタイルがあります。手だけ見て誰か分かる、なんていうことはよくありますよね。
特徴的な回し方の人を見続けていると知らず知らずのうちにそのスタイルに似てしまうということもあるので注意が必要です!

ペン回しは勉強の邪魔? 実は違うんです!

勉強中にペンを回していて怒られた経験、ありますよね?笑
「そんなことやってるから勉強できないんだ」「ちゃんと集中しろ!」なんて言われたことがある方も多いんじゃないでしょうか?

しかし、これは全くの逆なんです!

勉強中に無意識にペンを回してしまうのは、頭の中の余計な考えを消すためにやっているんです。

もちろん、ペン回しの練習に集中してちゃダメですよ!笑
手馴れた技を無意識にやってしまうのはより集中して考えるためなんです。

脳の中にはワーキングメモリという、行動や考えを制御するメモ帳のようなものがあります。
例えば「ご飯を食べて歯をみがいたら勉強しよう」という短い期間の行動をメモしておくものです。

このメモ帳は枚数に制限があり、大体1人3~4枚程度、つまり3~4個の項目なら理論上同時進行できるということです。

ですが、ここで予期しないことが起きると、メモ帳の一部が食われてしまいます。
さっきの例で言うなら、ご飯を食べる前に「お風呂掃除して」なんて言われたら、最後の「勉強しよう」という意識が飛んでいってしまうかもしれません。これは極端な話ですがみなさん同じような経験ありませんか?

勉強中に集中して問題を解いている時に、ふと晩御飯が気になったり、ゲームの内容がどうしても気になったりしてしまうこと、ありますよね?
こういう余計な考えが生まれると、それまで問題でいっぱいに使っていたワーキングメモリを食われ、思考力はガクッと落ちてしまいます。

このような余計な考えが生まれるのを避けるために、心を落ち着かせる手馴れた技をやってしまう、ということなんです。

ただし、だからと言って授業中にペン回しをすることを推奨しているわけではありません!
自分から見たら分からないかもしれませんが、ペン回しは周りから見たら集中を阻害する場合があります!

ペンを落とした時の音だけでなく、単純に視界に入った時に気になってしまうなど、周りの人からは勉強の邪魔になるということはよく覚えておきましょう。

授業中や図書館など、他にも勉強している人がいる場合はなるべく控えましょう。

まとめ

・新しい技を覚えようとしている時は前頭前野が活性化している。
・持続的に前頭前野を活性化できれば脳トレとして効果がある。
・持続的な活性化には分かりやすいステップアップが必要。

・手馴れた技をやると心を落ち着かせてリラックスさせる効果がある。
・手馴れた技をやると、線条体というやる気の中核が活性化し、やる気のスイッチをオンにする効果がある。

・ペン回しの感覚は「技の記憶」であり、小脳に内部モデルができることによって習得できる。
・内部モデルを作るためには、どこをどう動かすのか意識しながら練習するのが良い。

・人間はミラーニューロンによって見ている人の動きを取り込む性質がある。
・上手い人を見れば上手い動きを、逆に下手な人を見続けると下手な動きを取り込んでしまうこともあるので注意が必要。
・ペン回しでは手や指の動きまで真似してしまうので注意。

・勉強中の無意識なペン回しは、頭の中に余計な考えが生まれるのを防ぎ、集中するためにやっている。
・だからと言って授業中のペン回しは周りに迷惑がかかるのでやめましょう。

より詳しい内容はページトップからレポートをダウンロードしてご覧ください。

 

篠原教授、お忙しい中お時間を作って頂いてありがとうございました!!


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